トピックス

築300年屋敷の民泊「上松家」(長野県飯田市)の紹介

長野県飯田市の三穂下瀬で民泊として、新しい風が吹き始めた旧家、上松家。
今回は、この上松家を紹介させていただきます。

民泊は、世界的に広がりをみせていたAirBnBの波が近年日本にも到来し、東京や大阪といった都市部を中心に広がりをみせています。空き家や古家に、簡易宿泊所としての機能を持たせる改装を施して利用されるケースも多く、次第に地方都市でも増えてきました。長野県では長野市や下諏訪などに有名なものが存在しています。

飯田市では、同市今宮町で絵画教室を営む爆発芸術舎がこの地域の第一号とされています。爆発芸術舎は美大芸大受験科であったり、子どもや大人向けの絵画教室を営むアトリエですが、このアトリエをAirBnBに登録して海外からのアーティストとの交流の場に転換している珍しいケースです。（なんと、宿泊料フリー）

単なる宿泊施設としてだけでなく、民泊の魅力は、海外からのバックパッカーらが訪れる異次元空間としてであったり、宿泊者同士が交流する機会であったりするようです。多くの施設でお洒落な空間演出がなされており、古家や空家の活用アイデアとしては、カフェについで人気があります。

ところで、長野県飯田市で民泊といえば、「農家民泊」が有名です。農家民宿とは、農家が住居を旅行者に提供するタイプの宿泊施設。旅行者は農作業を手伝い、作物を食べたりして農家との交流を深めます。飯田市、下伊那郡地域では数百件もの農家民泊があるようです。ちなみに、先日お会いした大学生の方が調べたところでは、この民泊で主たる生計を立てている家庭は少ないか、ない、とのことでしたので、あくまで農業の付属的な要素のようです。

農家がおこなう農家民泊は特区指定により法的な規制が緩和され、比較的許可を得やすい形式です。上松家はこの農家民泊として登録した施設で、築300年近く経つといわれる屋敷の土蔵などを改装して、ただいまプレオープン中。先の爆発芸術舎の協力を得て、国内外を問わず旅行者を集める計画だそうです。

上松家は、清内路村（現、阿智村清内路）から流れる阿智川が下瀬村（現、飯田市三穂下瀬）の南東部で天竜川に合流する地点、川を見下ろす場所にあります。江戸時代、この地域の山から切り出した材木や榑木を筏に組んで天竜川を川下げしており、清内路山からの材木などは、この阿智川を使って天竜川に流していました。

この二つの川の合流地点には、これらの材木をいったん集める貯木場（渡場）が設けられていました。受け渡しの点検や管理、筏を組むための作業場としても機能しており、上松家はこの渡場の管理を任せられていたそうです。現在、木が育ってしまい、お屋敷からは直接川を眺めることはできませんが、眺望の良さは今も健在です。（参考：「三穂村史」）

そうした歴史的背景をもつ上松家ですので佇まいは超一級。現在のオーナーさんは、ここで育ち、しばらくの間、県外や海外で生活をされ、この頃、再び故郷に戻ってきた方です。せっかくの建物を維持してゆくために民泊をはじめることにしたそうです。

プレオープン中の現在も、地元のアーティストが日参して改装工事をおこなっています。これは長野や諏訪の事案、また爆発芸術舎の事案でも感じられたことですが、アーティストが手をかけることでリノベーションが一般化しない印象を受けます。今後、古家や空家のリノベーションには、建築家、工務店や職人さんに続いて、アーティストが介在する案件が増えてゆくかもしれません。もちろん、ディ不動産でも積極的に登用してゆく考えております。（5）